賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

公営賭博も真っ青、為替デリバティブの凶悪性

 
「為替変動に対するリスクヘッジ」を謳い文句にしている金融派生商品のひとつ、【為替デリバティブ。取り扱っている銀行各行は、その信用力を生かしてこの商品の売り上げを伸ばしている。
 
ところがこの【為替デリバティブ】はかねてより、契約時点の時価評価分析ではコールオプションよりもプットオプションに大きい比重が置かれていてリスクヘッジ効果が少ない点が指摘されている。その結果多くの中小企業では、リスクヘッジどころか多額の損失を招く結果になって販売元とトラブルになるケースが増加している。
 
このような【為替デリバティブ】のギャンブル性について、雑誌『経営者通信』8月号(Vol.26)の連載「経営者のための為替デリバティブ被害 対策講座」コラムが取り上げている。書いているのは岡林法律事務所の岡林俊夫弁護士で、『為替デリバティブ』のテラ銭のパーセンテージを競馬や宝くじなどの公営ギャンブルとの比較で論じているのが秀逸だった。
 
 金融機関の多くは『為替デリバティブ』を販売するに当たって、「手数料はかからない」と説明している。確かに短期為替予約の場合、1ドル当たり1円未満という極めて少額な手数料は顧客企業にとって大した負担ではない。また3か月乃至は半年程度と云う短期で必要最小限のリスクヘッジを目的としているので、リスクは限定的である。
 
 しかし銀行側からすれば、より手数料収入の多い長期のコールオプションを抱き合わせで顧客に売りつけたいところである。そして顧客が取得するコールオプションと銀行が取得するプットオプションとの差額が、実は銀行側が顧客に説明しない「実質の手数料」となる。
 
一例を挙げると、顧客が取得したコールオプションの契約時の時価評価がプラス3,000万円、銀行が取得したプットオプション時価評価がマイナス9,000万円の場合、顧客が損失を被った時の銀行収入は差額の6,000万円で、これが実質の手数料となる。その割合は67%。
 
そして銀行=胴元として、この「手数料」を博奕で胴元がピンハネする「テラ銭」と同様のものと考えると、『為替デリバティブ』のピンハネ度が異常に高いものだという事が理解できる。
 
すなわち、日本中央競馬会(JRA)が胴元の「中央競馬」のテラ銭(配当の中から一定の割合で主催側が受け取る金)は25%、総務省所管の「財団法人日本宝くじ協会」が胴元の「宝くじ」は46%。そして『為替デリバティブ』のテラ銭は67%、これはもう“ボッタクリ”としか言いようがない博奕なのである。
 
しかも競馬や宝くじの場合、外れた時の損失が投下金額以上になる事は有り得ないが、『為替デリバティブ』はプットオプションのため損失額が無限大となる可能性を有している、いや、実際にその例が頻繁に発生している。
 
おまけにこのリスキーな金融商品は5年~10年分という長期物、かつ途中解約不可ときている。こんな凶悪なものがメガバンクから堂々と販売され、リスクについての説明も十分に為されなかったのだから、実に恐ろしい話である。
 
また以前の「選挙賭博」に関する各エントリーで「博奕の基礎は確率論の理解から」と述べてきたが、為替変動をネタにした博奕の配当率を算出するのはいろいろな確率論で使われる数式を使ってみても、妥当と思われる数値を出すのが難しいのである。
 
その前に救い難い問題は、ハイリスク・ローリターン(あるいはノーリターン)の金融派生商品を「最低のバクチ」と認識せずに手を出してしまう経営者や運用担当役員が数多く存在するところにあるのではないだろうか。株式の「信用取引」の売り方で逆日歩責めに遭ったり上値へ持っていかれたり、「日経平均オプション取引」のプットの売り方で大損失を被っている投資家がこの世にはごまんと居るのに、その教訓が全然生かされていないとしか思えない。
 
パチンコ全廃論や公営賭博全廃論などギャンブル自体の是非を論ずる人は数多い。しかしメガバンクが舌先三寸で売りさばいた『為替デリバティブ』、こんな凶悪な代物に比べれば、公営ギャンブルの方が余程真っ当な存在ではないだろうか。
 
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