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元受刑者雇用で入札優遇措置、次は義務化か

 
法務省は自省発注工事の入札の一部に、元受刑者雇用実績のある企業を優遇する特例措置を設ける由。元受刑者の社会復帰を促進する試みとしては評価できる。
 
日刊建設工業新聞124記事↓
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法務省 元受刑者雇用企業を入札で優遇 3億円未満の工事、総合評価方式で加点
 法務省は3日、総合評価方式が原則になっている同省発注工事の入札の一部に14年度から、刑務所出所者を雇用した実績がある企業を優遇する特例措置を導入すると発表した。入札への応募時点から過去1年の間に3カ月以上継続して元受刑者を雇用した実績があれば、その実績に応じて評価点を加算する。元受刑者の社会復帰支援が目的で、国の官庁でこうした取り組みは初めてになるという。
(中略)
特例措置を導入するのは、元受刑者の雇用機会を増やし、出所後の再犯を防いで社会復帰を支援するのが狙い。再犯者の約7割は再犯時に無職という現状の改善を目指す。
 元受刑者を積極的に雇用する法務省の「協力雇用主」には13年4月時点で1万1044社(うち建設業5204社)が登録されているが、その大半は中小零細企業で経営状況が不安定なため、実際に元受刑者を雇用しているのは380社にとどまるという。そこで同省は、協力雇用主の半分近くを占める建設業での雇用が増えれば効果は大きいとみて、今回の特例措置を講じることにした。
(以下略)
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協力雇用主とは、「犯罪・非行の前歴等のために定職に就くことが容易でない保護観察又は更生緊急保護の対象者をその事情を理解した上で雇用し、改善更生に協力する民間の事業主である」(平成24年版『犯罪白書』より)。
 
ただし記事中にもあるように、その大半は中小零細企業である。また法務省発注の営繕工事自体がそう頻繁に発生している訳ではなく、入札参加企業もそう多くはないことから、おそらく劇的な改善効果を期待するのは無理であろう。
 
もっとも、何も手を打たないよりはましである。つい最近まで法務省発注の各地の刑務所の改築、補修工事の設計に一部関わっていた経験から愚考するに、出来れば実施設計の段階で、受刑者が服役中に身につけられる建築専門技能が生かされるような工事仕様、建築材料などを織り込むよう指導を行えば、効果は更に大きい筈である。
 
それでも元受刑者の雇用が進まず、また再犯者の無職比率が下がらないのであれば、次の手は「すべての企業を対象とした“義務化」となる可能性がある。
 
現に去る6月13日には、平成30年度から精神障害者の雇用を企業に義務付ける「改正障害者雇用促進法衆院本会議にて全会一致で可決、成立している。平成10年には身障者に加えて知的障害者の雇用も義務付けられているので、精神障害者の次は元受刑者の社会復帰支援のための雇用義務付けという流れは有り得る。
 
その場合、考慮する必要が生じるのは、元受刑者が過去に犯した犯罪の種類となるだろう。前述の平成24年版『犯罪白書』では、協力雇用主として登録している企業及び全国の刑事施設と刑務作業契約を締結している企業のうち2,547社に対して行った「刑務所出所者等を雇用することに関するアンケート調査」の結果が載っている。
 
その中の「刑務所出所者等を雇用する際,必ず必要とする条件」に対する回答では、「社会人としての自覚」,「社会常識」及び「普通自動車免許」が半数を超えており、「専門的知識」は11.8%に過ぎなかった。また,「刑務所等を出所するまでに身に付けておいてほしい知識・能力」では、「社会常識」が非常に高い比率となっており、次いで「資格・免許」、「ビジネスマナー」となっており、「専門的知識」は8.4%に過ぎなかった。
 
これはつまり、過失などの犯罪で受刑した高学歴の人物が少なく、元受刑者の大半は元々社会常識に対する認識が薄いか、もしくは欠落している事を意味している。犯罪種類でいえば明確な殺意の下での殺人、傷害、暴行、脅迫強要、強姦、放火、薬物乱用などでの受刑者。
 
その辺りの“線引きを考慮しなければ、通常の従業員が受ける精神的負担は相当のものになるだろう。また反社会的勢力に属していた経歴のある元受刑者を雇用することで、入札以外の営利目的を達しようと考える不心得な企業も出現する可能性すらある。つまり法務省の意図とは異なり、逆に反社フロント企業の合法的増長を招く結果となる。
 
その対策を法務官僚が考えているとしたら、おそらくは『人権擁護法案=人権侵害防止法案』を成立させて、アンタッチャブルな3条機関『人権委員会』を設置し、「元受刑者への差別偏見は人権侵害!」と決めつけて、一般市民の精神を改造する、もしくは反対する者を「人権侵害」で逮捕・拘留・起訴し、次々に有罪とする・・・といった所であろう。これが一番手っ取り早い方法だからである。
 
我が国ではまだまだ、更正して出所してきた元受刑者に対して厳しい空気が蔓延しており、それ自体は改善してゆく必要がある。しかしながら犯罪被害者や被害遺族への救済が決して十分ではない現状で、元受刑者の再犯防止や社会復帰のための制度充実を先行させるのは、市民感情からも無理があるように思える。
 
政府にはその辺りのバランスを十分考慮した上で、対策を進めて頂きたいものである。まずは官公庁で元受刑者、特に殺人、強姦、薬物乱用の前科者を臨時特別公務員として雇用し、様子を見てみるのが一番かも知れない。
 
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