賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

米軍、遂に電磁砲を実用化か

 
たしか10年以上前だが、イギリスのJane's Defence Weekly誌(略称:JDW)に米海軍の将来ビジョン“ SEA POWER 21”のひとつとして電磁 (EM) 砲が挙げられていた。
 
電磁力(ローレンツ力)によって発生する高速の運動エネルギーで絶大な破壊力が発生するため、炸薬が不要となり搭載弾数が増加、射程距離も長くなり命中率も上昇する。初速はマッハ7~8という超高速である。
 
但し大電力を必要とするため、蓄電および瞬間電気放出の技術進歩が求められていたもので、このたび米海軍が実証実験の開始を発表したのは、やっとこの技術の実用化目途が立ったためであろう。
 
時事通信48823分配信記事↓
… … … … … … … … … … … … … … … … … …
電磁加速砲、洋上試験へ=輸送艦に据え付け―米軍
 【ワシントン時事】米海軍は7日、開発中の電磁加速砲(レールガン)について、2016会計年度(1510月~169月)中に試作機を最新鋭の高速輸送艦に据え付け、洋上での実証試験に入ると発表した。
 レールガンは、火薬に代わり電磁エネルギーを利用して弾を撃ち出すため、発射される弾の速度(弾速)が従来方式に比べはるかに速く、射程も長い。海軍は、実用段階のレールガンの射程は200キロ超、弾速はマッハ7超に達すると見積もる。(以上引用)
… … … … … … … … … … … … … … … … … …
 
この電磁砲に関連するが、以前業務で担当していた製品に、火薬に拠らず岩石やコンクリート構造物を破砕できる「静的破砕材」というものがあった。その隣接領域に、テルミット反応(※)の燃焼熱を高電流放出による電撃エネルギー注入で高熱化して瞬時に対象を破砕する方法がある。
(※)酸化鉄とアルミニウムの粉末の混合物に点火したときの反応、酸化還元反応
 この破砕方法の要は、高電流放出が可能な電撃エネルギーユニットを如何に小型化できるかという点にあった。同様に電磁砲の今後の課題は、大電力制御ユニットをどれだけ小型化できるかという点であろう。艦船のようにスペースをとれる兵器はまだしも、これが陸上の戦闘車両に搭載できるようにするためには、相当の小型化を目指さなければなるまい。 
しかし大電力制御ユニットの小型化が実現すれば、例えば戦車などは小口径の非火薬軽量砲弾を大量に搭載することが出来るようになる。
 
もっとも超高速の電磁砲弾に対する防御方法は今のところ無い。どんなに装甲の厚みを増しても、簡単に貫通撃破されてしまう。また高速過ぎるので回避運動も非常に難しいものとなるだろう。
 
戦術レベルにおける対策は、「先手必勝」。先制攻撃こそが生残性を高める唯一の対策となる。一方、電磁砲は元々がICBM(大陸間弾道核ミサイル)の迎撃を目的として開発が進められた経緯もあり、戦略レベルでは相当の発想転換が求められる筈である。
 
電磁砲の実用化は、戦術・戦略レベルの思想変革を促すものでもあるのだ。
 
… … … … … … … … … … … … … … … … … …
ブログランキングに登録しています。
応援いただければ、下記アドレスをクイックお願い致します。
         ↓
… … … … … … … … … … … … … … … … … …