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『007』は修羅のたまもの

 
「殺しのライセンス」を所持するMI6工作員『007』に「人を救うライセンス」とは、なかなか面白いではないか。
 
読売新聞4161644分配信記事↓
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ジェームズ・ボンド俳優、地雷除去の国連特使に
 【ニューヨーク=水野哲也】スパイ映画「007」でジェームズ・ボンド役を演じる俳優のダニエル・クレイグさんが14日、地雷除去の啓発活動を行う国連の親善特使に任命された。
 今後3年間、世界各地で地雷の危険性を訴え、地雷除去への支援を呼びかける。
 国連本部で行われた任命式で、潘基文(パンギムン)事務総長は、ジェームズ・ボンドが映画の中で任務のために人を殺傷する許可(ライセンス)を与えられていることにかけ、「私は人を救うライセンスをあなたに与えます」と述べて笑いを誘った。クレイグさんは「人命を救うために日々危険と立ち向かっている人たちと共に働くことができて光栄です」などと述べた。(以上引用)
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「007」シリーズのどれだったかで、北朝鮮の地雷原にホーバークラフトで突っ込む場面があったが、たしかに地雷除去は地味ながら相当の危険と隣り合わせの作業である。「人助け」ではあるが、修羅の世界の一歩手前と云えよう。
 
修羅といえば、シリーズ原作者、イアン・フレミング (Ian Lancaster Fleming) は情報部員としてMI6、安全保障調整局(BSC)に所属、WW2では英海軍の情報部員としてフランスに於ける急襲作戦に参加している。
 
大戦中英軍がノルマンディー上陸作戦(19446月)以前にフランスで行った大規模な作戦は二つある。最初は1942819日のディエップ奇襲作戦、二番目は1943328日のサン・ナゼール港強襲作戦である。
 
デッエップ奇襲作戦は将来の大陸反攻上陸作戦のシミュレーションが目的だったと云われている作戦だが、その実態は「思いつき」同然の計画。しかも事前にドイツ側情報網に察知されており、待ち構えていたドイツ軍の中に飛び込む形となった英軍コマンド部隊とカナダ陸軍第二師団の計6,000名の内、3,600名以上が死傷する大敗を喫している。
 
一方、現在でも造船の街として世界的に有名なサン・ナゼール港への強襲作戦は、当時唯一の大型ドック「ノルマンディー・ドック」を破壊してドイツ海軍の戦艦「ティルピッツ」の動きを封じる作戦であった。
 
ドック破壊のため、旧式駆逐艦「キャンベルタウン」の艦首に爆薬3tを仕掛けて突っ込むという壮絶な特攻作戦で、参加した英軍コマンド部隊611名の内、帰還できた者は半数以下の激戦だったが、作戦自体は成功している。
 
どちらにフレミングが参加したか定かではないが、いずれも生還率は低かった激戦であった。なるほど、修羅場をくぐった経験があってこその「007」シリーズであると改めて感心するのである。
 
歴代シリーズ映画だけ見ていると、どうしてもジェームズ・ボンドのタフガイぶりと驚天動地の新兵器が印象に残ってしまう。しかし小説を読めば、決して“超人”ではないボンドの心理的葛藤や説得力ある戦闘シーンなど、従軍経験に裏打ちされたものだったのかと納得させられる。
 
201510月公開予定の007 スペクターSPECTRE)』も、そういった視点で改めて観ると新しい発見があるかも知れない。
 
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