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無責任大勲位、中曽根元首相

 
先週、中曽根元首相が読売、産経の両新聞に、其々異なる内容の一文を寄稿した。
 
読売のものは「対華21ヶ条要求」を引き合いにして日本の対中政策を侵略と断じたもの。この「対華21ヶ条要求」で大迷惑を蒙ったのは実は日本側だったことについては、coffeeさんのブログで検証されている。そちらをご参照して頂ければ幸いである。↓
(ご参照)
中曽根「対アジア侵略だった。『対華21か条要求』以降、侵略的要素が強くなった」・生き恥晒すな
 
そして産経のものは集団的自衛権を論じているが、後半の靖国神社公式参拝に関して、「私的参拝を否定したわけではない」とも強調~とある。
 
産経新聞87755分配信記事↓
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中曽根元首相、産経新聞に寄稿 集団的自衛権行使を
 中曽根康弘元首相は6日、戦後70年にあたり産経新聞に寄稿した。集団的自衛権について、「私の従来の立場は、名実ともに国家固有の権利として認めるものだ」として、行使を容認すべきだと主張した。
(中略)
 首相の靖国神社公式参拝を昭和60年8月15日の1回で終えたことについて、外交上の判断だったと改めて示すとともに、「私的参拝を否定したわけではない」とも強調した。先の大戦について「戦争の責任は全て日本にあり全て日本が悪いという『東京裁判史観』には違和感がある」と改めて主張した。一方、中国などアジアでの戦争は「侵略行為であったと言わざるを得ない」と振り返った。(以上引用)
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実は中曽根大勲位が「外交上の判断」で靖國参拝を止めた経緯については、13年前に自ら講演で喋っている。訪中する経団連の稲山会長(当時)に余計なことを依頼したばかりに、中共側が参拝止めてくれと要求して来たのである。
 
以下はその13年前の講演、つまり国際安全保障学会2002年度年次大会に於ける特別講演の内容について、私が某団体に提出したレポートの一部である。編集するのも面倒なので、そのまま再録してみた。
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平成141130
藤田 達男
 
国際安全保障学会 2002年度年次大会に於ける特別講演
 
(平成14年11月30日、於 国士舘大学世田谷校舎・多目的ホール
 
「21世紀 日本の国家戦略」と題して、中曽根康弘元首相の講演が行われた。
冒頭、20世紀のイデオロギーが崩壊した21世紀は、「歴史観と宗教性」が人間確立に必要であり、自民党の後輩議員たちにもその旨語っている云々から始まり、主な講演内容は過去自分が体験した日本の安全保障政策史についてであった。
 
元海軍(主計)中尉であったので、再軍備については戦後すぐに志しており、日本人として最初にマッカーサー元帥宛て直訴状を出したそうである。また自衛隊法の制定に参画した当時、シビリアン・コントロールをめぐって辻政信が「おまえら、軍令と軍政を一緒にするのか」と怒鳴り込んできた等あまり知られていない話が多かった。
 
氏は対北朝鮮5原則、対中国5原則なるものを提言している由。しかし対北朝鮮はよいとして、
「中国側は武力に訴える事無く、平和統一をめざす」、「台湾側は独立を叫ばず、中国を刺激しないようにする」
などの、対中国の内容が台湾側に不利なように思える条件提言を中台双方に提示したそうである。
 
最後に質問を受け付けていたが、近畿福祉大学の岡本氏の、
「中曽根政治を高く評価している。ただ中曽根政権時代に靖国神社参拝を二回目から取り止めたのは、当時の中国共産党内に於ける保守派と改革派との対立に絡んで改革派支援のためであった事を最近の資料により了解したが、同時に悪しき前例を作ってしまったのではないか」
との質問に対しては、
 
胡耀邦ら改革派を助けるためだった。当時の安倍(晋太郎)外相の訪中時にも中国側は特に何も言わなかったが、直前に経団連の稲山会長(当時)が訪中した際、それとなく様子を探ってきてくれと頼んだところ、稲山氏の帰国当日朝6時ごろ向こう側(改革派らしい)3人ばかりが押しかけて来て、参拝止めてくれと言ってきた」
 
そうである。
 
また歴代の首相が参拝しなくなった事については、
「その後については、私は首相を辞めちまったので関係ありません(ママ)」
との無責任な発言があり、会場は一瞬白けた雰囲気になった。
 
冒頭の「歴史観と宗教性が必要云々」の言葉が白々しく思えたのは、私だけでは無かったようであった。
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思えば中曽根氏は在任中から「風見鶏」として定評のあった人物。片方で再軍備集団的自衛権行使と主張する一方、当時の日本が置かれていた状況を検証する事無く侵略行為と決めつけるなど、無責任の極みとしか言いようがない。
 
自身を“ご意見番”とでも思っているのだろうが、氏の無定見ぶりを知ってる人は知っているのだから、おかしなパフォーマンスは止めてもらいたいものである。
 
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