賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

香港区議選(昨年11月)の結果と分析

 
●来る9月4日に実施される香港立法会議員選挙(日本の国会議員選挙に相当)では、当ブログでも再三述べてきた香港民主派、特に「本土意識」を持った“本土派”と呼ばれる人々が多数、立候補する予定である。
 
それに対して香港政府(と中国政府)は何人かの特定候補予定者について、なんと「立候補禁止」という措置を講じ始めている。「一国二制度」「香港の自由の尊重」が恣意的に踏みにじられている訳だが、それほどまでに香港政府と中国政府は民主派、特に“本土派”の増大を恐れていると見ることも出来よう。
 
「本土意識」、“本土派”とは、「香港こそが“祖国”である」という認識下に香港ローカルの権利拡大を目指す意識と行動で、若い世代を中心に急速に広まっている。“本土派”の層は、各種調査での「自分は“中国人”ではなく“香港人”だ」と考える階層と重なっている。
 
特に生まれながらに「自分は香港人であって中国人ではない」と意識している若年層の人々にとっては、香港の民主化が最優先かつ全てであり、既存民主派の集合体である「香港市民支援愛國民主運動聯合會」(略して「支聯會」の説く「建設民主中国=中国本土の民主化などは、自分たちには関係のない話に過ぎないのである。
 
●その“本土派”の台頭が明らかになったのは、2014年秋の雨傘運動後初の選挙である昨年1122日に実施された、香港区議会議員選挙に於いてである。
 
 
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(東方日報20151124日トップ)
 
香港区議会議員選挙はほぼ完全な小選挙区選挙で、日本のような比例代表枠は無い。香港の区議会は18の区議会地区に分けられ、各区議会の管轄地域は更に細分化された小選挙区から成る。
 
小選挙区の定数は、すべて1名。今回の全体投票率47%だが、これでも過去最高の数字である。従って各小選挙区の実際の総投票数2,0005,000票の範囲内で、激烈な選挙戦が繰り広げられることとなる。
 
また区議会議員は各地域の課題を中心とするため、必ずしも政党色を前面に出している訳ではなく、無党派議員が多数存在している。
 
上記を踏まえて全般の結果から記すと、全431議席中、
 
●建制派(親中派):206議席(-11議席
●泛民主派:104議席(+21議席
 
党派別で見ると、
 
親中派の最大政党、「民建聯」は-17議席
・民主派の最大政党、「民主黨」も-4議席
・本土派政党「新民主同盟」が16人中、15人が当選(すべて初の議席獲得)
・「傘兵」と呼ばれる一昨年の雨傘運動に参加した民主派若手が、9人初当選
 
民建聯の後ろ盾は中国共産党労働組合である。組織力、資金力共に他政党を凌駕しているが、今回は議席を二桁レベルで減らしてしまった。特に当選回数の多い大物議員の落選が目立った。
 
また民主派最大の民主黨は穏健民主派であるが、民主派増加の中で唯一、議席を減らしてしまった。特に元主席(代表)の何俊仁氏ら大物議員が落選。
 
この結果から判ることは、親中派、穏健民主派ともに世代交代が進んでいるという事と、民主派内では民主黨に代表される従来型民主派ではなく、前記の「本土派」および“本土意識”を持った人々が抬頭してきたという事である。
 
あの天安門事件(第二次)に関する資料を展示していた「六四紀念館」(天安門事件記念館) 中共の隠微な圧力で閉館の憂き目に遭ってしまったが、それを運営する民間団体である前記の「支聯會」はすべての民主派を糾合する組織体として、長年六四集會(天安門事件記念集会)を取り仕切ってきた。
 
 
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しかし近年、上記の香港「本土」意識の興隆にともない、支聯會の活動方針に異を唱える急進的民主派人士が増加し、六四集會そのものの参加者は微減傾向にある。
 
中共が事件の存在そのものを人類史から抹消しようとしている第二次天安門事件の悲劇は、決して忘れ去られてはならないものである。従来それは香港の民主運動とリンクして語られてきたが、そろそろ既存民主派も新たな運動形態の中での「六四」の位置づけを提示すべき時期に入ったのではないだろうか。
 
香港「本土」意識の興隆はもう止められない方向へと進んでおり、今回の区議会議員選の結果がそれをよく表している。来月の立法会議員選挙では、更にそれがはっきりとした結果となって現れるだろう。
 
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