賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

今月の詩:細川頼之『海南行』

 
<「決して諦めない」人生>
 
細川頼之(ほそかわよりゆき、1329年~1392年)は南北朝時代の武将、室町幕府管領。足利氏一門の武将として各地を転戦する一方、和歌や詩文にも親しみ、禅宗を信仰していた。
 
軍記物語太平記』が貞治六年(1367)細川頼之の上洛と管領就任でもって終わっているのは有名である。曰く、
「氏族も是を重んじ、外様も彼命を背かずして、中夏無為の代に成て、目出かりし事共也」(巻40「細河右馬頭自西国上洛事」)
 
しかし実際には頼之が管領となってからも激しい権力闘争と騒乱は続き、とても目出かりし事共也で終わる状態ではなかった。そんな頼之の心中が窺われる詩『海南行』は、私の好きな詩のひとつである。
 
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人生五十愧無功   人生五十、功(いさお)無きを愧()
花木春過夏已中   花木春過ぎて夏(すで)に中ばなり
滿室蒼蠅掃難去   満室の蒼蠅(さうよう)掃へども去り難く
起尋禪榻臥淸風   起って禪榻(ぜんたふ)を尋(たづ)ねて淸風に臥せん
 
花木=花や木。
夏已中=初夏・五月。
蒼蝿=青ばえ。ここでは、うるさい小人のこと。
禅榻=禅家の長椅子で、座禅に用いる。
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これを詠じた時期、頼之は政権から離れて領国の讃岐へ追われるように帰るところだった。「人生五十年」と言うが自分の志は果たされず、まさに功無きを愧じるばかりという感慨に溢れている。
 
しかし天は頼之をそのまま朽ち果てさせなかった。四国の領地経営に専念しながらも中央政界への復帰を睨み、その晩年には復権を果たしたのである。
 
近年では安倍晋三氏のように、国難の時期に当たって復権を果たす人物は必ず存在する。
 
私事ながら筆者は今月、「人生五十年」プラス5年を迎えた。ここで改めて『海南行』を詠じ、細川頼之「決して諦めない」人生を範としたいと思うこの頃である。
 

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