賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

暴動黒人より酷い香港民主派の苦境

 
ミズーリ―州での黒人暴動、アメリカ社会の深部に未だ人種差別が存在する疑いが炙り出された事件である。かつてのキング牧師Martin Luther King, Jr.による非暴力の公民権運動」で黒人・有色人種の地位向上が図られたが、それは決して差別の終わりではなかったという事を改めて認識させられる。
 
もっとも「公民権運動」の成功はキング牧師ら有徳の士が指導したからこそであって、卓越した実力を持つ指導者がいなければ本件のように「略奪」や「破壊」が伴う抗議活動になってしまう。
 
奇しくも香港において真の公正な選挙を求める「佔領中環」(略して「佔中」)、つまり国際金融街中環(セントラル)の占拠運動が「佔領香港三箇所」に姿を変えて未だ続いているが、「佔中三子」と呼ばれる運動の発起人、
 
・戴耀廷(ベニー・タイ)氏:香港大学法律系副教授
・陳健民氏:香港中文大学社会学系副教授
・朱耀明氏:牧師
 
彼らが当初計画した中環(セントラル)占拠という政治手法の狙いは、キング牧師が展開した「公民権運動」を範として、あくまでも非暴力を貫きつつ1万人以上の民主派人士で「佔領中環」行動を続け(これを「和平佔中」と称す)、中共と香港政府に圧力をかけるというものであった。
 
ところが香港民主派と米黒人たちとでは、その相手としている対象が似ているようで全然違っている。
 
かつてキング牧師たちが相手とし、今また黒人たちが相手としているのは、自由民主主義の米政府と米国社会である。まがりなりにも法治主義がその前提にあり、政府の決定に民意が関与している。何よりも公正な選挙権・被選挙権が保障された普通選挙が実施されている国内の話である。
 
しかし香港民主派の市民、学生が対峙している相手は、全体主義国家である中華人民共和国とその出先機関に堕ちた香港政府、自分の利益のために自由と民主主義、そして自らの基本的人権をも捨てた親中・反民主の人々である。そして中国本土には、公正な選挙権・被選挙権が保障された普通選挙という代物自体が存在していない。
 
アメリカの黒人たちのように暴動という手段で自らの主張を表現するのも、相手次第である。米政府や州政府が公権力で鎮圧すると云っても無差別に発砲する訳ではない。しかし中国の場合、苛烈な手段での鎮圧が有り得ることは既に「六四事件(第二次天安門事件)」で実証済み。
 
以前に書いたように、セントラル占拠とは非暴力の「公民抗命(市民による抗議)」であり、これは「香港民主運動にとって大殺傷力を有する武器」である。そして非暴力と云えども違法行為には違いなく、誓約書上にてその罪を負うと表明した参加者は占拠が終わった後、自発的に関係各部門へ「自首」して、起訴の是非を任せるべきである。それが「佔中」行動の政治感応力を保持するための重要部分である・・・と『佔領中環』P.34に述べられている。
 
そして上記の「佔中三子」と民主派政党「工党」の主席:李卓人氏は12月5日に「自首」するという。元々の彼らの「佔領中環」行動計画では、自らが当局に「自訴」することで遵法精神尊重を示すと共に、民主運動のモラルの高さを内外に知らしめ、運動の更なる発展の起爆剤にするということだったので、これは覚悟の自首である。
 
※李卓人氏は「六四紀念館(天安門事件記念館)」運営代表でもある
 
海峡という自然障壁で大陸と一線を画す台湾とは違い、香港は中共と陸続きであるが故に、香港民主派勢力の伸長と真の公正な普通選挙の実施が中国大陸の民主化に与える影響は極めて大きい。それが故に香港政府と中共は「一國两制」と普通選挙国際公約を反故にしてまで、香港の民主主義を殺そうとしているのである。
 
もうすでに、学生団体に所属しているものの幹部でも何でもない学生が、香港から中国本土に入境しようとして中共当局に拒否されるという事例が数十件発生している。それは民主化運動の波及を恐れる中共の「怖れ」の表れでもある。
 
民主化運動根絶」を進める中共は上記4氏の自首に対して、おそらく香港基本法の解釈を曲げてでも厳罰を科す方針で臨むだろう。また今後、数千数万のデモ、占拠参加者を検挙するだろう。
 
香港内の留置所がすべて満員になってしまっても、中国は境界を越えて広東省内の各地に検挙者を留置するつもりである。今、情報として出ているのは、深圳、東莞、恵州、広州の各留置所(香港の政治月刊誌『前哨』11月号より)。
 
国際社会の目が届かない中共管轄の留置所内では、基本的人権など無いに等しい。香港の民主運動は今回の一件で挫折消滅するような底の浅いものではないし、また消滅させてはならないが、中共による苛烈な処遇で物理的に「消滅」してしまう人も多数に上ることだろう。
 
アメリカの暴動黒人よりも悲惨な状況に追いやられるであろう香港民主派学生・市民を救援するために、我が国有志と国際世論は立ち上がるべきである。
 
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