相場格言に「事故は買い、事件は売り」というのがある。
突発的な事故は企業業績に短期の影響が出る可能性があるものの回復することが多いので瞬間的に突っ込んだ所は「買い」。一方、事件はその会社の体質・姿勢に根本的な原因があることが多いので企業業績に長期の悪影響が出るため「売り」、ということを意味している。
昨29日午後、例の「紅麴」事件の小林製薬が記者会見を開いたが三時過ぎに同社の株式情報を見て驚いた。
記者会見が始まったのは14:00、株価は4,950円前後。そして14:17頃の小林社長発言「公表遅れ批判、真摯に検証」辺りから急に買われ出し14:52に高値5,195円をつけ終値は5,095円、前日比＋190円(↑3.87%)、出来高も12,599,300株とランキング上位(25位)に名を連ねるという結果に。
プペルル酸とかいう「未知の物資」が検出されたり、同社による公表が2ヶ月も遅れ、しかも取引先企業名と「紅麴」関係商品名を全く明らかにせず見かねた厚労省が公表に踏み切ったという不手際対応など、もうこれは「事故」ではなく立派な「事件」ではないか。しかし昨日の株式売買を見る限り大方の投資家は「紅麴」問題を単なる突発的事故程度に認識している可能性が高そうである。
もっとも先週末までは概ね6,000円台で推移していたので3/26の年初来安値4,700円はさすがに突っ込み過ぎ…ということで自律反発しただけかも知れないが。
そしてもうひとつ謎の株式売買は記者会見中で質問にもあった「インサイダー取引疑惑」である。
日本経済新聞3月29日配信記事↓
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小林製薬･紅麹記者会見 社長「今は進退考えず」
(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF293EB0Z20C24A3000000/ )
（中略）
【午後2時22分】小林社長「インサイダーないと信じている」
インサイダー取引が疑われることについて渡辺執行役員は、「顧客の身体の状況などを医師に確認してきたので、インサイダーとは考えていない。2月5日に品質管理に関わる部署とともに、製品に問題がないか出荷試験の記録を見直すなどしている。どのような物質が影響したか、異物が混入したのではないか、などを検証している」と話した。小林社長は「当社ではインサイダーについては十分に教育している。インサイダー取引はないと信じている」と話した。
（中略）
【午後3時29分】「インサイダーはないと信じている」
インサイダー取引が疑われることについて小林社長は「誤解されるのはよくない。1年間、当社の株価は下落基調だった。中期経営計画で大きな工場投資を盛り込み、減価償却費が増えて、営業利益の伸びが横ばいになっていたことが原因だ」と話した。従業員の株式の売却については、「売却時には会社に登録しなければならない。従業員にも教育しているのでインサイダーはないと信じている」と述べた。
（以下略）
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腎疾患の入院事例などの状況が小林社長に報告されたのは2月6日。
・前日2/5の終値6,647円。
・当日2/6は安値6,487円があって終値6,547円(-100円)。
その後は3/22終値6,056円まで下落基調で推移しており、急落したのは翌週月曜日の3/25。
・3/25 始値5,056円ストップ安で終値そのまま5,056円(-1,000円)
確かに不自然と言えば不自然ではある。
但し会見で小林社長の言うように同社株は2020年12月1日に上場来高値13,120円をつけた後は長期下落傾向なので「不自然ではない」と言い逃れることは難しくはない。
一口に「インサイダー取引疑惑」と言っても役員や従業員自身の売買は簡単にバレる筈だから親類や友人、重要取引先や機関に何気なく情報が伝わった可能性は皆無とは言えないのではなかろうか。
そして自らペラペラそれを喋る奴はいないだろう。証券取引等監視委員会など関係各所が本件について興味を示すとしても、表立った捜査は難しい筈である。結局は「知ったもん勝ち、やったもん勝ち」か・・・。
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