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中国空母が洋上で“立ち往生”

 

中国が最初に就役させた空母「遼寧」と初の国産空母「山東」は明らかに周辺諸国にとって脅威となっている。

 

ところがこの2隻が洋上で“立ち往生”してしまうという意外な展開に。

 

NEWSポストセブン5月12日配信記事↓

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実戦能力に疑問の“動かぬ中国空母” 元副参謀長の責任追及

(https://www.news-postseven.com/archives/20210512_1658169.html?DETAIL )

中国では、初めての国産の航空母艦山東」が母港の海南省三亜市の海軍基地から出港して間もなくして、1日以上も動かなくなった様子が衛星で捉えられた。さらに、もう1隻の空母「遼寧」もやはり公海上で1日以上も止まったままになり、その様子が米海軍艦船によって撮影、公表された。ネット上では「中国の空母はそろいもそろって張子の虎。実戦では全く役に立たないことが証明された」と揶揄する声が出ている。(以下略)

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中国海軍(人民解放軍海軍)の最近に於ける練度の向上は目覚ましく、戦術運動(洋上での艦隊作戦行動)もここ十年で長足の進歩を遂げている筈だったのだが、実際の運用能力は米国に及ばないという事か。

 

5年前に亡くなった“中国の航空母艦の父”である劉華清・元中央軍事委副主席がこの光景を見たら、地団駄を踏んで悔しがることだろう。

 

 

その故・劉華清氏であるが、昨日古い雑誌を読み返していたところ、香港の政治評論誌「前哨」2005年5月号に劉華清氏に関する回想記事が載っていた。

 

劉氏の談によると、1970年に氏が配属されていた造船工業指導セクションに於いて、上層部の指示により航空母艦建造についての議論がなされていた由。

更に1980年、氏が米国訪問した際に、アメリカ海軍の空母「キティホーク」を視察したことが強いインパクトを与えたという。

 

80年代になると鄧小平が人民戦争戦略を転換し、国土の外側で敵を迎え撃つ「積極防衛戦略」を打ち出すのだが、それに呼応して腹心の劉氏も「近海積極防衛戦略」を提唱し、中共海軍の防衛範囲を外側に広げていく、つまり外洋海軍の建設を打ち出したのである。

 

中共海軍の作戦海域を近海の第一列島線と外洋の第二列島線の二つに分ける概念も、劉華清氏が海軍司令員(総司令官)だった時代に生まれたもので、中共艦船が我が国周辺海域で活動しているのはこの戦略に沿っている。

 

その後、劉氏が海軍司令員に在任中の1986年11月、中国海軍内部で海軍発展戦略研究会が開催され、中国の海洋権益維持と南沙諸島収復(占領)、台湾回帰(つまり台湾侵攻)などの戦略が討議された際に、航空母艦の整備が論じられている。

 

1987年3月の共産党中央軍事委員会では、海軍装備計画の二大問題として、原子力潜水艦航空母艦の両方が海軍建設の中核に位置づけられているが、どうも中国海軍部内で潜水艦を主力として駆逐艦護衛艦などの通常戦力の充実を唱える向きと、空母を中心とする対外洋戦力の充実を考える向きとの間に論争があったことを窺わせる。

 

この時には自前で空母を建造する技術力が無かった事と、航空母艦の建造コストおよび搭載機の整備に莫大な費用がかかるため研究課題となっている。

 

しかし空母自体の設計や搭載機、電子装備などの研究は継続され、更にロシア海軍航空母艦設計者を招聘するなど、航空母艦建造の技術的ノウハウは着実に蓄積されていた。

 

空母「遼寧」の前身である旧ソ連空母「ワリヤーグ」買収に当たっては、劉氏の意向が強く働いていたようであるが、これも他国製の艦艇で間に合わせるためでは無く、中共自身の航空母艦建造に向けてのステップであった。

 

現実に「ワリヤーグ」=「遼寧」は中共海軍にとって、航空母艦の建造から艦載兵装、電子装備などの実験、艦載機の離発着訓練や新型搭載機の開発試験、そして空母運用の実地訓練と要員の教育に至るまで、航空母艦の各種知識を得る絶好の教材となった。

 

それらの知見を元に建造された筈の国産空母「山東」がしかし、洋上で動かなくなってしまうという致命的な失態を演じるとは・・・

 

本件をもって中国の海軍力の実際を過小評価するのは問題があるが、軍事はハードウェアばかりを増大すれば事足りるという事でも無いという好例とも言える。もって他山の石としたい。

 

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