(「スターフェリー」船上からの香港島の光景。以下、昨日筆者撮影)
現地に来てみると有名な観光スポットでもある尖沙咀(ちむさーちゅい)や欧米人の多いビジネス街の中環(セントラル)では、4カ月を超えた一連のデモの痕跡はほとんど見られなかった。
(尖沙咀の一大SC「ハーバーシティ」入口にて)
つまり、いつも通りの「香港」の雰囲気は何ら変わりがない。
(中環「ランドマーク」内の平穏な光景)
どうも香港市民は「デモ疲れ」&来月24日に予定されている「香港区議会議員選挙」を睨んだ新展開に備えているようである。
立候補の受け付けは先週4日に始まっており、逃亡犯条例問題から「マスク禁止条例」に渉る香港政府の強権政治に対する反発が深まっていることから、所謂「民主派」勢力(※)が圧勝するとの予測が強まっている。
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(※)以前から述べているように香港の政治シーンについて、多くの日本の方は、
- 「親中国派」対「民主派」
という図式で捉えている方が多いが、正確には
- 「建制派(親香港政府派=親中派)」対「非建制派」
である。
そして「建制派」もその親中の度合いによって温度差があり、「非建制派」も既存民主派から香港本土派、自決派、独立派と幅が広い。
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問題は敗北必至と見た建制派政党と香港政府が、選挙の延期や中止を検討しているのではないか? という点。
香港の区議会は18の区議会地区に分けられ、各区議会の管轄地域は更に細分化された小選挙区から成る。各小選挙区の定数は、すべて1名。そして各小選挙区の総投票数2,000~5,000票の範囲内で、激烈な選挙戦が繰り広げられることとなる。
また区議会議員は各地域の課題を中心とするため、必ずしも政党色を前面に出している訳ではなく、無党派議員が多数存在している。
前回(2015年11月22日)の選挙結果は全431議席中、
党派別で見ると、
・建制派の最大政党、「民建聯」は-17議席
・非建制派の最大政党、「民主黨」も-4議席
・本土派政党「新民主同盟」が16人中、15人が当選(すべて初の議席獲得)
・「傘兵」と呼ばれる5年前の雨傘運動に参加した非建制派若手が、9人初当選
「民建聯」の後ろ盾は中国共産党と労働組合である。組織力、資金力共に他政党を凌駕しているが、前回は議席を二桁レベルで減らしてしまった。特に当選回数の多い大物議員の落選が目立った。
また非建制派最大の民主黨は穏健民主派であるが、非建制派増加の中で唯一、議席を減らしてしまった。特に元主席(代表)の何俊仁氏ら大物議員が落選。
この結果から判ることは、建制派、非建制派ともに世代交代が進んでいるという事と、非建制派内では民主黨に代表される従来型“民主派”ではなく、前記の「本土派」および“本土意識”を持った人々が抬頭してきたという事である。
5年前の雨傘運動を主導した学生勢力が一般市民の支持を得ているのは、元をただせば従来型民主派政党と政治家の力量不足により、非建制派政治勢力が離散集合を繰り返してばかりで目立った成果を市民に示していないことに原因がある。
また既存民主派政党の活動形態に不満を示す急進的民主派が2010年以来急激に増加し、インターネット類の普及も手伝って、今や一大勢力を形成するに至った。
彼らの多くは「本土派」とも呼ばれ、各種調査での「自分は“中国人”ではなく“香港人”だ」と考える階層と重なっている。「本土意識」、「本土派」とは、「香港こそが“祖国”である」という認識下に香港ローカルの権利拡大を目指す意識と行動で、若い世代を中心に急速に広まりつつある。
前回の全体投票率は47%だが、これでも過去最高の数字である。おそらく今回はそれを上回る数字となるだろう。
そして香港政府(とその裏にいる中国)が選挙そのものを中止するならば、国際世界は更に中国非難の度合いを深めることになるだろう。
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