賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

“ラスベガスの偉人”逝去

 

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シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズとマーライオン

 

去る11日、世界最大のIR(統合型リゾート)開発・運営企業である米ラスベガスのサンズ社(Las Vegas Sands Corp)創業者兼CEOのシェルドン・アデルソン氏が病没した。享年87歳。

 

Bloomberg 1月13日配信記事↓

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Sheldon Adelson, Who Brought Casinos to China, Dies at 87

(https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-01-12/sheldon-adelson-who-brought-vegas-casinos-to-china-dies-at-87 )

 

Sheldon Adelson, who built the largest casino company in the world and used his wealth to support Republican candidates and groups, has died. He was 87.

Adelson died Monday night from complications related to non-Hodgkin’s lymphoma, Las Vegas Sands Corp. said in a statement Tuesday. Adelson took a leave of absence earlier this month to continue treatment for the disease.  (以下略)

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記事にあるようにボストンのタクシー運転手の息子だったアデルソン氏は若い頃から大変苦労し、最初に成功したのはトレードショー(見本市)の運営業者としてだった。1979年ラスベガスにコンピューター業界の展示商談会であるCOMDEX(コムデックス)を創業し、世界最大級のトレードショーに育て上げたのである。

 

関連してラスベガスに1989年サンズ・ホテルをオープン、翌年にサンズ・エキスポ & コンベンションセンターを設立した氏の転機は1995年4月、コムデックスを孫正義氏のソフトバンクグループに約8億USドルで売却した事だった。

 

アデルソン氏はこの売却益を元手としてカジノ業界に進出した。従来の業界のコンセプトはカジノと宿泊施設の組み合わせだったが、新たにカジノとコンベンションを併せた「統合型リゾート」=「MICE」という概念を打ち出したのである。

 

※「MICE」とは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨旅行・招待旅行)、Convention またはConference(学術会議・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語

 

そして1999年にサンズ・ホテル跡地にイタリア・ベニスを模したテーマ型リゾート「ザ・ヴェネチアン」をオープン。これがラスベガスを「レジャーの街」としてだけでなく「コンベンションの街」としても発展させる契機となった。アデルソン氏が“ラスベガスの偉人”の一人と称される所以である。

 

※ラスベガスの発展に尽力した代表的人物は俗に“ラスベガスの偉人”と呼ばれたりする。例えば最初に本格的なカジノホテル『フラミンゴ』を建設したバグジー・シーゲル、1960年代から70年代にかけてマフィアと闘って排除した大富豪ハワード・ヒューズ、カジノに無料アトラクションやショー・ビジネスを誘致した「複合型カジノ」でファミリー層の需要を開拓したスティーブ・ウイン氏など。

 

サンズ社が打ち出した「MICE」という概念はマカオシンガポールのカジノシーンにも影響を及ぼした。

 

1999年12月、マカオポルトガルから中国に返還された後、中国政府とマカオ当局は2002年に地元資本の何鴻燊(スタンレー・ホー)氏率いる澳門旅遊娛樂股份有限公司(STDM)が40年間独占してきたカジノの経営権を3つに分割し、公開入札とした。

 

このとき落札したのが以下の3社であった。

① 澳門旅遊娛樂股份有限公司(STDM、マカオ

② 銀河娯楽股份有限公司(ギャラクシーグループ、香港)

③ 永利度假村股份有限公司(Wynn社、アメリカ・ラスベガス)

 

さらにこのライセンスを分割することが認められ、銀河娯楽のサブ・ライセンスを入手したのがサンズ社で、同社が最初に手掛けたのが2004年オープンの「サンズ・マカオ(金沙娯楽場)である。

 

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カジノ部分の面積70,000㎡、テーブルゲーム740卓に加えスロット・マシーンが1,254台という世界最大級のカジノを建設し、STDMの1社独占に飽き飽きしていた華人系ギャンブラーたちのハートを掴んで空前の人気となった。

 

次に2006年8月オープンした「ザ・ヴェネチアン・マカオ・リゾート・ホテル」澳門威尼斯人度假村酒店)は客室3,000室が全て、70㎡のスイートルームという贅沢な造りで、43軒の高級レストランと350軒のブランドショップ(90,000㎡)、併設するカジノは50,000㎡、テーブルゲーム750卓にスロット・マシーン2,000台と世界最大級、ホテル内はベネチアの街並みが再現されている総合アミューズメント施設。

 

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この「ザ・ヴェネチアン・マカオ」は今やすっかりマカオIRの顔として定着した観があるが、同様にシンガポールにおいてランドマークと化したのが「マリーナ・ベイ・サンズ」である。

 

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シンガポールで2010年にオープンした統合型リゾート「マリーナ・ベイ・サンズ」は同地を訪れる観光客数増加の新記録樹立に大きく貢献した立役者であり、我が国でもテレビCMや旅行番組でたびたび取り上げられているので、もはや説明不要であろう。

 

以上のようにラスベガスのみならず世界のIR発展に尽力したシェルドン・アデルソン氏だが、コロナ禍に見舞われている現況において氏の逝去は極めて暗示的である。コロナ後に全世界のIR・カジノ業界が従来のスタイルを復活させるのか、それとも別のコンセプトが打ち出されるのか、まさに「時代の区切り」を感じさせるものがある。

 

改めて、アデルソン氏のご冥福をお祈りいたします。

 

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