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今月の詞:イスラエル国防軍・シャロン少将と中東情勢

 
イスラエル国防軍は勝利の軍隊であることを思い出して欲しい。
我が軍は敗北には慣れていない」
 
1973年の第四次中東戦争106日、イスラエルのお株を奪うアラブ側の奇襲・スエズ運河渡河攻撃から始まった。
 
その6年前、俗に「六日戦争」と云われる1967年の第三次中東戦争でエジプト軍はあっけなく敗退。自軍の不甲斐なさに呆然としたナセル・初代大統領は、なり振り構わぬ軍の近代化と訓練を推進する。
 
1970年にナセルは心臓発作で死去するが、彼の盟友である後継のサダト大統領もその路線を継承して、今度は先制攻撃の挙に出たのである。
 
いままで負けっぱなしだったエジプト兵の士気は高く、アラブ側からの奇襲攻撃を想定していなかったイスラエル軍の防衛線は崩壊の危機に瀕した。ゴラン高原方面ではシリア軍の攻撃に対して奮戦したイスラエル軍だが、スエズ運河方面ではシナイ半島を席巻され、文字通り玉砕する部隊も現れたのである。
 
●苦戦・敗戦の時こそ問われる指揮官の姿勢
 
その最中、イスラエル国防軍を退役していたシャロン少将は急遽軍に復帰し、前線を駆け巡って動揺する隷下部隊を掌握、エジプト軍の攻勢を鈍らせる事に成功した。彼が自軍司令部に戻ると、初めての苦戦に右往左往する幕僚たちを落ち着かせるために放った言葉が、冒頭の台詞である。
 
シリア軍を撃破して後顧の憂いを絶ったイスラエル軍シナイ半島方面でもエジプト軍を撃破、1016日にはスエズ運河を逆渡河してエジプト軍を包囲してしまった。
 
その原動力は元々スエズ運河の逆渡河攻撃論者だったシャロン少将であり、明確な攻撃ビジョンを持っていた彼だからこそ、大苦戦の中にあって部下の信望を得ることが出来たのであろう。
 
戦争自体は米ソの仲裁で22日に停戦となるが、この戦いでシャロンは国民的英雄として内外に認められる存在となった。1973年には国会選挙で当選し、政治家としてキャリアを積んでゆく。
 
2001年首相に就任するが2006年脳卒中で倒れて、同じ右派リクード党出身のオルメルト首相代行に権限を委譲した。その後、意識不明状態が続いたが、昨年1月11日に死去した。享年85歳。
 
奇しくも第四次中東戦争勃発日と同じ昨日(106日)、イスラエル軍参謀次長が来訪中のロシア軍代表団と会談した。
 
スプートニク1061953分配信記事↓
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ロシア軍とイスラエル軍 シリアでの行動調整について協議© 写真: public domain
ボグダノフスキー第一参謀次長を長としたロシア軍代表団が、2日間の日程でイスラエルを訪問する。ロシア代表団はイスラエルで、イスラエル軍の代表者とシリアでの行動連携ならびに紛争解決について協議する。
匿名を希望するイスラエルの将校は、次のように語った-
「10月6日、イスラエルのゴラン参謀次長が、ロシアのボグダノフスキー第一参謀次長と会談する。会談はテルアビブで開かれる。これは2日間の日程で行われるロシア軍代表団イスラエル訪問の一部となる。会議では、地域における行動連携などについて話し合われる」。
イスラエルは、シリアのアサド大統領の要請に従ってシリアでテロ組織「IS(イスラム)」の拠点に対して空爆を行っているロシア軍との偶発的衝突を避けながら、シリアでの行動の自由を維持しようとしいている。
イスラエルのネタニヤフ首相が9月にモスクワを訪問した時、シリアでの連携・調整メカニズムの創設について基本的合意に達していた。なおネタニヤフ首相のモスクワ訪問には、イスラエルのアイゼンコット参謀総長が同行した。
最近数年間、外国のマスコミは、イスラエル空軍がシリアでの空爆、倉庫や車列への爆撃、偵察飛行に関与しているという情報を一度も報じていない。イスラエルは通常、このような報道についてはコメントしないが、危険性が生じた場合には、軍事力を行使する用意があると、その都度発表している。(以上引用)
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もしもシャロン氏が健在であったなら、中東戦争時には考えもつかなかった昨今の「IS(“イスラム国”)」の台頭に、どう対処しているであろうか。
 
タカ派イメージが先行するシャロン氏だが、意外にもイスラエル政治史上初めてパレスチナ国家の独立を明言した首相でもあり、現実路線を取るにやぶさかではない筈だ。
 
今回のロシア軍代表団との協議を皮切りにイスラエルが現実路線に舵を切るならば、かつての仇敵・シリア軍と提携して緊急の脅威である、「 IS(“イスラム国”)」を討伐する可能性も考えられる。
 
イスラエル政府がシャロン氏の衣鉢を継いで選択するのなら、先ず国家の存続を第一義に考えた上で、おそらくそうするであろう。中東情勢は今後、意外な組み合わせの下で急変する。注視が必要である。
 
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