賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

追悼:黒川紀章氏没後十年

 
選挙戦真っ盛りではあるが、一息いれて書きたいことがある。
 
平成191012日、日本を代表する建築家の一人であった黒川紀章氏(享年73歳)が亡くなってから今年で10年。黒川氏は東京都庁を設計した故丹下健三氏の弟子だが、師の作風から離れて、銀座の「中銀カプセルタワー」に代表される「メタボリズム理論」や「共生の思想」を一貫して主張してきた。
 
亡くなった平成19年に入ってから突然、4月の東京都知事選、7月の参院選に出馬したが、当時は何で黒川氏が政治の世界に踏み込んだのか意味不明だった。その主張も目新しいものではなかった。
 
しかし今になって考えると、死期を悟って残りの人生やりたい事をやろうとする気持ちだったのだろう。
 
筆者も業界関連の一人としてご冥福を祈ると共に、氏が設計した建築作品の内で福岡県内の有名物件を御紹介したい。
 
門司港レトロハイマート>
所在地:福岡県北九州市門司区東港町20
竣工年:平成11
用途:集合住宅、商業施設、展望室)
延床面積:18,384
 
JR門司港駅を降りると、明治・大正期に建てられた洒落た建築物が整備保存され、観光名所となっている。いわゆる門司港レトロと云われる地帯で、そのランドマーク的存在が「門司港レトロハイマート」である。
 
イメージ 1
 
竣工当時は「歴史的建築物と調和しないのでは?」という声も聞かれたが、最上階に展望室(有料)も設けられている事から、今では関門海峡の名所の一つとなっている。
 
イメージ 2
(展望室から関門海峡、関門大橋を望む)
 
北九州に旅行、出張されるならば、是非この門司港レトロハイマートを含む「門司港レトロ」訪問をお薦めする。景観はともかく、我が国の近代史に果たした北九州・門司港の歴史的役割を肌で感じることが出来るからである。
 
福岡銀行本店>
所在地: 福岡市中央区天神2-13-1
竣工年: 昭和50
敷地面積:   4,142m2
建築面積: 2,904m2
延床面積: 30,812m2
施工者 :  株式会社竹中工務店
 
イメージ 3
 
現在では大型建築物に公開空地があるのは珍しくも何ともないが、この建物の建造当時は画期的な試みであった。黒川氏は公共空間と私的空間とを対立するものでは無く、調和・共存するものとして捉え、公開空地を「中間体」または「媒体空間」「緑空間」と提唱した。
 
この福岡銀行本店ビルはその思想によって設計された、日本初の物件である。ちなみに竣工直前になって施工者の竹中工務店の大チョンボが発覚し、激怒した黒川氏が建て直しを要求したという曰く因縁のビルでもある。
 

<ホテルキャビナス福岡>

所在地: 福岡市博多区博多駅2丁目18-1
 
イメージ 4
 
建物自体はよくあるカプセルホテルだが、内部の「個室カプセル」(個室タイプのカプセル部屋)をデザインしたのが黒川氏である。
 
イメージ 5
 
JR博多駅・博多口から徒歩2~3分、駅前の通り沿いにあって地下鉄のアクセスも良い。隣が高級ホテルの「ホテル日航福岡」なので、初めて博多を訪れた方でも迷わず辿りつけるのが嬉しいカプセルホテルである。
 
その他の建築作品としては、
 
福岡県庁舎
設計者:黒川紀章建築都市設計事務所日建設計、九州開発計画研究所
所在地:福岡県福岡市博多区東公園
主用途:庁舎
竣工:1981
 
設計者:黒川紀章建築設計事務所
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅2-5-17
主用途:オフィス
竣工:1984
 

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