前のエントリーで、司馬遼太郎「燃えよ剣」に於ける主人公の新撰組副長・土方歳三が語る、
「目的は単純であるべきである。思想は単純であるべきである。」
という銘言をご紹介した。
この「目的は単純であるべきである」という点から現下のロシアによるウクライナ侵略を考えてみると、
先ず侵攻されたウクライナ側の「目的」は明快である。それは、
◎ロシア軍を押し返し、侵略された国土を奪回する。
無論、2014年に奪われたクリミアと東部2州の親露派占拠地も含まれる。
対するロシア側、より正確に言えばプーチンの「目的」は侵攻開始以来、迷走を続けている。
当初はNATOの東方拡大を防ぐという大方針があってのウクライナ中立化、そのためのゼレンスキー政権瓦解を狙った首都キーウへの強行進軍だった筈だが、同時に東部・南部戦線にも相当の兵力を割いて2014年以来の占拠地域の拡大とウクライナ軍の包囲を狙っていたようである。
プーチンとしては「目的」が複数化しても多方面から侵攻すればウクライナ軍も分散せざるを得なくなり、全ての侵攻地域でのロシア軍の数的優勢は明らか。まさに鎧袖一触と踏んでいたのだろう。
さらに当時支持率20%台に低下していたゼレンスキー政権なんぞ数日で崩壊し、たとえゼレンスキー暗殺に失敗したとしても「亡命政権」という形で追い出せると考えていた筈だ。
ところが初動での航空撃滅戦に大失敗し、首都近郊の飛行場奪取にも失敗、東部・南部戦線も占拠地は拡大したもののウクライナ軍本体は捕捉できず、その挙句に補給段列を狙われるわ、突進の原動力である戦車や各種戦闘車両は「ジャベリン」等で次々に撃破されるわという有様。
そして最重要であった筈の「NATOの東方拡大を防ぐという」という国家戦略「目的」は、なんとフィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請という事態で吹っ飛んでしまった。
こうしてプーチンは当初策定していた筈の複数の「目的」を達成できず、迷走状態になってしまった。これ全て、「目的は単純であるべきである」の逆を行ったためである。
更に大きかったのは、侵攻直前まで内外で「軟弱」とみられていたゼレンスキー大統領に意外な胆力があったことだろう。やはり指揮官の胆力はAIが発達した現代戦に於いても非常に大きいものである。
世はAI・人工知能全盛に向かっているものの、AIが未だに人間を越えられないものの一つが「胆力」ではないだろうか。
これに関しては最近様々な知見を得ることが出来たので、稿を改めたい。
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