賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

靖国不逞シナ人は香港民主派!

 
12日朝、靖国神社の神門前で「母忘南京大屠殺(南京大虐殺を忘れるな)」と書かれた布きれを掲げ、「戦犯東條英樹」と書かれた“位牌”らしきものを燃やし、一部始終を撮影していた中国籍の住所不詳、自称公務員、郭紹傑容疑者(55)。
 
TV、ネット配信記事、そして時事・政治系の各ブログさん達も、この男が尖閣諸島中共領と主張する「保釣行動委員会」のメンバーである旨、言及していたようだが、皆さん重要な一点を忘れている(もしくは、知らない)。
 
この郭紹傑は、香港の既存民主派政党「工黨」の役員である。
 
「工黨」の副代表・李卓人氏(元立法議員、先日の立法会議会・九龍西地区の補選に出馬し落選)は中共の六四天安門虐殺事件を糾弾する『六四紀念館』(天安門事件記念館)運営の民主派団体「香港市民支援愛國民主運動聯合會」(略して「支聯會」)の責任者(前代表)でもある。
 
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(かつての六四紀念館。筆者撮影)
 
ところがその「工黨」の役員がわざわざ来日し、よりによって中共のお先棒を担ぐパフォーマンスを演じているのだからお話にならない。
 
もっとも当ブログの香港政治エントリーでかねてから述べているように、この「工黨」や最大民主派政党「民主黨」、「公民黨」、そして「社民連」といった政党は従来型“民主派”。反中共、反香港政府という立場は“民主派”だが、それ以外の政策や主張は反日パヨクと大同小異である。
 
上記の既存民主派各政党は「泛民主派」と呼ばれているが、近年の各級選挙では凋落傾向にある。その原因は中共の影響力の浸透というよりも、彼ら自身の言動に起因している。
 
例えば、当ブログでも度々述べているマカオ政府の市民への現金給付だが、2008年から始まった毎年の現金給付の名目は、富の還元、福利厚生の充実、インフレ対策ということになっている。しかし元々は2007年5月の大型流血メーデーデモ(治安警察が発砲し負傷者多数)で内外から非難を浴びて懲りたマカオ政府中共指導部が、住民懐柔策として繰り出した政策である。
 
2007年5月1日、マカオで約1万人以上が参加したメーデー集会に於いて(当時の人口は約50万人)、参加者が市内を行進中に進路変更を巡って治安警察隊(日本の機動隊に相当)と衝突した。
 
このデモでは事前に香港の「社民連」、「工黨」所属民主派議員が参加者を煽動していたこともあり、政府批判に対して敏感になっていた治安警察側の威嚇射撃が逆効果となって、一気に緊迫した状況を作り出してしまった。その結果、被弾した負傷者1名を含む負傷者多数、逮捕者10名を出す流血の惨事となった。
 
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2010年のマカオメーデーデモ、筆者も参加)
 
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2007年と同様、流血デモに発展)
 
そして上記民主派議員らは現在に至るも、マカオ当局から入境禁止処分を受けているのである。彼らは時々マカオのイミグレーションを突破しようと試みてマスコミのネタになっているが、多くの香港市民は“お騒がせパフォーマンス”的にしか見ていない。
 
また尖閣諸島中共領と主張する点では中共も香港既存民主派も同一で、特に上記民主派議員たちは手前らのパフォーマンスを兼ねて反日活動を行う者が多い。6年前尖閣に強行侵犯した香港人活動家とは、上記社民連所属の地方議員らだった。また穏健派の最大民主派政党「民主黨」ですら、当時の代表・何俊仁立法議員が日本領事館に侵入しようと殴り込みをかけるという暴挙を演じている。
 
このように上記の既存民主派政党と政治家らがパフォーマンスばかりで目立った成果を市民に示せず、離散集合を繰り返していることに飽き飽きした香港市民が4年前の香港「雨傘運動」で支持したのが、「學聯」(在香港の大学学生会連合)や「學民思潮」(Scholarism,2012年香港政府の「国民教育科」義務化に反発した学生組織)といった学生勢力だった。
 
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201410月、学生らに占拠された香港島中心部。筆者撮影)
 
同様に4年前「セントラル占拠(「佔領中環」、略して“佔中”)」を事実上主導した「佔中三子」と呼ばれる新しいタイプの人々が出現したのも、既存民主派政治勢力の運動の“手詰まり”に対する不満によるものであった。
 
また、既存民主派政党のパフォーマンス的活動形態に不満を示す急進的民主派が2010年以来急激に増加し、インターネット類の普及も手伝って今や一大勢力を形成するに至った。
 
彼らの多くは「本土派」「自決派」とも呼ばれ、各種調査での
「自分は“中国人”ではなく“香港人”」
と考える階層と重なっている。香港ローカルの権利擁護を活動テーマとし、「一国二制度」の枠を超えて「香港基本法の枠組みの打破」から「香港憲法制定論」までを提唱する党派も出現している。
 
以上のように既存民主派各政党に愛想を尽かした人々のほとんどは、先日の靖国不逞シナ人郭紹傑容疑者のような「反中国かつ反日」というスタンスをとっていない。しかし今、中共と香港政府、親中共派政党が弾圧対象としているのは、既存民主派ではなく新しく台頭してきた人々である。
 
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中共と香港政府に弾圧されている自決派議員、筆者撮影)
 
つまり裏を返せば、「反中国かつ反日」の既存香港民主派は中共・香港政府・親中共派にとって、香港市民の“ガス抜き”に使える都合の良い存在に過ぎないのである。
 
この事実を述べているのは当ブログだけかも知れないが、少なくともお越し頂いている皆様には、マスコミの言う「香港民主派」なるものの実態を正しく認識して頂ければ幸いである。
 
(ご参考)2015/6/20エントリー
<香港民主派内の“本土意識”台頭について>

(https://blogs.yahoo.co.jp/hkg_fan/14085386.html)


 
(追記)
ちなみに尖閣諸島中共領と主張する香港の「保釣行動委員会」は2系統ある。ひとつは中国共産党が実質の資金源である団体と、もうひとつは「反中国かつ反日」の既存香港民主派を中心とする資金の枯渇した団体。
 
本件の郭紹傑容疑者はカネの無い方の「保釣行動委員会」メンバーである。
 

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