賭狂がゆく

港澳(香港、マカオ)往来28年、人生如賭博

「俳諧賭博」をカジノの目玉に?

 
例のカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案」(※正式名称:「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」)、所謂カジノ法案」は継続審議となってしまったが、各種の検討事項を整理する時間がもらえたと考えれば、決して悪い話ではない。
 
それに関連して先日、「国際観光産業振興議員連盟」(通称「IR議連」、つまり「カジノ議連」)のメンバーであるN衆院議員と衆議院内で面談した時、「IRには日本独特のものが出せるといいのですが・・・」と持ちかけられて以来、「手本引き」、「花札」など日本古来の賭博文化をカジノの営業種目として採用できるかどうか検討している。
 
その中のひとつで検討に値すると思われるのが、俳諧賭博」
 
俳句と云う文芸がギャンブルの対象になったものだが、これは世界的にも非常に珍しい、と云うよりも皆無であると言った方が正確であろう。江戸時代が最盛期で、最近ではとんと聞かない博奕である。従って、この博奕に警察の手入れが入ったという話は聞いた事が無い。
 
これは元禄期に流行った、詠んだ俳句に評点をつけて得点の高下を競う「点取俳句」が元祖で、過熱ブームを引き起こしたため幕府が禁止令を出したという代物。ちなみに松尾芭蕉は「点取俳諧」に対して批判的であった。
 
俳諧賭博」のシステムは簡単である。いくつかバージョンがあるが、例えば親が五七五の俳句を書き出し、下五文字を隠す。子は隠された句を当てて、賭け金または賞品を貰うのだが、誰も当たらなかった場合はキャリーオーバー、つまり繰り越しになる。
 
賭けの対象となる俳句は有名なものではなく「詠み人知らず」、ご近所の爺さん婆さんが詠んだようなド素人の作品が多い。賭ける方は上五七句の部分の出来を見て、「この程度の実力なら下五句はこうだろう」と推理するのである。
 
例えば芭蕉の有名な句「あら海や 佐渡に横たふ あまの川」、こんなのが出題されたとすると、当てる方は大変である。「あら海や 佐渡に横たふ」の部分で一般人の想像を絶している。「あまの川」という句はまず思いつかないのではないだろうか。
 
しかしこれが筆者レベルなら、「荒海や 浜に横たふ」なんていう句になり、客は「こんな下手な句なら下はこうだろう」と各々「…」と書いて金を張る訳である。そして主催者が、隠してあった下五句を見せる。
 
 
当たった客は大喜びだが、外れた客は「なんてバカげた句なんだ!」と呆れ返る訳である。
 
馬鹿々々しいと言えばそれまでだが、実は相当の文化度が必要な賭博である。
 
何故なら、ヨーロッパの定型詩や中国の定型漢詩など世界に詩歌は数あれど、それを賭博の対象にしたという話は皆無だからで、これこそ我が国が世界に誇るべき高度な文化国家である一例と云えるだろう。
 
日本古来の賭博文化の極め付きともいえる、この俳諧賭博」カジノ法案通過後のIR施設で実施されるべき、カジノ営業種目の「目玉」とするべきではないだろうか。訪日外国人観光客に日本文化の粋「俳句」を教える絶好の機会になる筈である。
 
ご参考までに、安部譲二氏の『いつも心にギャンブルを』(ハルキ文庫、1997年)で俳諧賭博のサワリが述べられており、最近では嵐山光三郎氏の『悪党芭蕉』(新潮社、2008年)に詳細が書かれている。
 
(もし実際にこの『俳諧賭博』を行って警察に踏み込まれたとしても、小生は一切関知しませんので悪しからずご了承の程を)
 
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